EARTH PEOPLE

第1回 油井昌由樹さん

歳を取るごとにやることが山ほど出てくる。
そしてそれは実現できる。

- 油井昌由樹 -

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「オレ、今年は52歳なんだ。もう半世紀生きてるわけ。
でも、いま、おもしろいん だよ、すごくさ」
そう言って笑う油井昌由樹さん。メディアに登場する時には、夕陽評論家を名乗っていますが、その実、黒沢映画を中心に活躍する俳優であり、輸入会社や映像制作会社の社長であり、雑誌の企画・編集・執筆はする、イベントのプロデュースはする、テレビやラジオのキャスターもするというマルチ人間なのです。実にパワフルだ。でもどこにも無理がない。まだ話し始めたばかりなのに、ステキに年齢を重ているな(えらそうな言い方ですいません)と、うらやましくなってしまいました。

「よく言うんだけどさ、オレの生き方は過去進行形なんだ。だって、未来なんてないんだもん。“いま”という時間が未来に向かっているだけで、未来はない。何が言いたいかというと、オレたちが創っているんだ、ということ。未来なんてものは、自分の考え方ひとつでどうにでもなるんだよね。で、どうせ未来なんて見えないんだから、オレは後ろ向きで進んでいるわけ。今が良けりゃいい、という意味じゃないんだ。自分がやってきたことを喜べなくちゃしょうがないからね。後で気分がいいこと、気分がいいと気がついたこと、やっておいて良かったな、とかね。そんなことの積み重ね。もちろん過去だって記憶の中にあるだけでさ、実際にはない。現実の世界で、やっぱり何かを作っている時がおもしろいね。さわれるとかさ、人にあげられるとかね。やることが山ほどあってさ、それが実現できるんだもん、歳取れば取るほどね」

なんだか年齢を重ねていくのが楽しみでしょうがないように見えるほど。こちらもなんだか元気が出てくるぞ。

「たとえばさ、映像でも、ビデオで撮るのがいいのか、35mmで撮るのがいいのか、経験で知っているわけじゃない。いま何でもできるよ、オレ。スーパーマンにどんどんなっているだ。だって飛べるもん。知り合いで、コロンビア大学で小さなジェットエンジンを開発しているマッドサイエンティストがいるんだけどさ、そいつの機械をつけると飛べるよ。ロスオリンピックの開会式で降りてきたじゃない、ジェットエンジン背負ってさ。あれとは全く考え方の違う物らしいんだけどね。あと5000万あればできるんだ、油井、5000万出さないかって(笑)」

若いころから海外も国内もあちこち旅に出かけている油井さんは、海外の友人も多いそうです。自分の経験、知識、友人が増えれば増えるほど、毎日が楽しくなるし、できることもわかることも多くなると油井さん。それがおもしろくてたまらないみたい。

「おもしろいってさ、言葉では伝えられないんだよ。うん、オレ、原稿も書くけど、思っていることの10分の1も伝えられないよ。人間という動物がもっともまずったのは、言葉を持ったこと。これ、すごく不完全なコミュニケーション手段なんだから。鳥が何千羽といっせいに右にビューって行ったりするじゃない。鳥は言葉を持っていないから、あれ、何かでやっぱり伝えているんだと思うんだ。きっと人間も持っていたはずなんだけどな、テレパシーみたいなもの。たとえば、千利休は茶の極意がわかっている。利休が黙ってこれを続けなさいと。あるお茶の先生がそれを聞いて40年50年と自分のためにお茶をたててて、フッと、あっ利休はこれが言いたかったんだ、とわかる。そんな世界もあるんだよね。自分がおもしろいと思って、おもしろがっていて、気がついたら何十年もたっていた、とね。過去進行形だからさ、オレ(笑)。なんてことを夕陽を見ながら考えたりするわけさ」

毎日がおもしろくてしょうがないという、“ガキっぽさ”を残す(ごめんなさい!)油井さんとは、なんだかちょっとイメージが違うような精神世界の話まで飛び出しました。でも、夕陽や焚き火は、なぜか人を正直にしたり、やさしくするものですよね。夕陽を見ながら、つい、誰にも言わなかった自分の秘密を漏らしてしまった経験のある人もいるんじゃないでしょうか。いろんな夕陽を見て、あちこちの土地の人と友人になってきた油井さんならではの話だ、と改めて思い、しみじみとしてしまいました。

さて、夕陽の話が出てきたところで、第1回はここまで。もちろん、次回も油井さん。おまちかね夕陽の話です。お楽しみに。

つづく

 
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