|
「太陽が夕陽にかわって沈みきるまで、長いところで1時間半ぐらいある。なぜか知らないけど、夕陽の光子(こうし)がオレに当たっている、夕陽の圧みたいなのがあって、それを静かに受けている感じがするんだよ。その間にいろんなことが自分の中に去来するんだ。それを見つめているのがおもろいんだよ」
夕陽評論家を名乗っていると、うんざりするほど受ける質問が、「どこの夕陽が一番ですか」というものだそうです。でもねえ、やっぱり聞きたいじゃないですか。どこの夕陽が一番ですか、愚問を承知で質問してみました。
「たとえば360°地平線みたいなことこに立っている。夕陽が目の高さに降りてくるじゃない。するとさ、自分の影の先が見えないくらい長いんだよ。大地を横切っているわけ、ずーっとはるか向こうまで。ふっと考えるわけだよ。オレが地球のトップに立っていて太陽が目の前にある。で、後ろに木星があるとするとさ、オレの影が木星に映っているってこと。オレは宇宙に住んでいます、という体験ができたんだよね」
うわー、体験してみたい。頭の中にそのシーンが浮かんでくる。イメージしただけでも壮大な気分になるけれど、実際に体験すると、もっとすごいんだろう。秘密の場所をこっそり教える少年のように、油井さんはちょっと得意そうな目で語ってくれました。「これから行ってみない?」と言われたら、「行きます行きます!」と答えてしまいそう。興味津々の我々を見て、まだあるぞ、と言うようにニヤニヤしながら油井さん。
「太陽が沈んだ後に、天文薄明孤というのができることがあってさ。その小さいのが東の空にできるんだ。反対薄明孤っていうんだけどね。空の色って逆光だと白いよね。だから夕陽の側の空は白濁している。反対側の東の空は、順光だと紺碧なんだよ、深〜い青。その中に、薄いピンクの孤ができる。感動的なんだ、これが。そこにだな、グレーの大きな孤ができる。これ、地球の影。地球の影が大気に映っている」
ふう〜、聞いているだけでため息が出る。お話を伺っている場所は西麻布にある油井さんのバーですが、それを忘れるくらい引き込まれてしまいました。この感動(話を聞いただけなんだけど)を、言葉に表現できないのがもどかしい。
読んでいる皆さん、伝わってます?
「あんたたちこんなとこで何やってんの。夕陽見に行かなくちゃ(笑)」
何も海外に行かなくても、日本でも都会でも美しい夕陽に出会えると油井さんは言います。そういえば夕陽って見てないな。毎日あるはずなのに、顔をちょっと向ければ見られるはずなのに。
「な、夕陽評論家だろ。その辺の夕陽好きとは違うんだから(笑)。あっ、あとあれもすごいよ」
油井さんの話は続きます。 |