EARTH PEOPLE

第3回 油井昌由樹さん

 

さて、夕陽評論家・油井さんのお話最終回。
どうしてそんなに物事をおもしろがったり、感動したりできるんだろう、
その辺りをお聞きしました。

「自分の心が動くような大事なことを記憶するには、リラックスしてないとね」

と、まずひと言。このリラックスがなかなか難しいんですよね。リラックスしているようで、実はそれは単にだらけているだけだったり。寝ているだけだったり。でも、どうもそれとは違うような気が……。

「森の中で寝袋で寝ている気分と、六本木のキレイなお姉ちゃんとこで飲んでいる気分と、オレ、あんまり変わらないんだ。笑っちゃうよ、アウトドアの先生みたいな人を六本木のキレイなお姉ちゃんのお店に連れていくと、借りてきた猫みたいになっちゃう。オレ、ダメなんだ、そういうの。だって、黒沢の映画でカメラが回っているところで、リラックスしているやつなんていないよ(笑)。そうじゃないと、もったいないよ。この世に生を受けて、いい記憶がたまらない。まあ、黒沢の映画だからできるんだけどね。凡庸な監督じゃあ、任せてらんないからね。大きな感じ……お釈迦さまの手の上みたいなさ、そんな感じがリラックスを生んでいるのかな。地球の上とかね」

それは大きな安心感なんでしょうか、それとも、それさえもおもしろがってしまう好奇心なんでしょうか。どんな感じなのでしょう。

「自分の感情におぼれていないっていうか、あっいいな、ステキなところにいるな、という心地よさ。そりゃあステキだよ、ヨーイ……この時間は、人間ができる最高の力を、全員が結集する時間だからね。あの緊張感。リラックスしているから緊張感が楽しめるんだよ。リラックスしているから、集中できるんだよ」

簡単に油井さんが言うけれど、その秘訣を、ぜひ、教えてほしいもの。

「ひとつだけコツがあるとすれば、物も事も人も、みんな好きになるってことかな」

う〜ん、確かに仕事だからとか、つき合いだから、とか好きでもないのにやっていることって、結構ありますよね。そういうことも、嫌がらず、好きになってみると、いろいろおもしろいことが見えてくる。そう油井さんは言ってるのですね。

「やっぱり、みんな、“時間”や“便利”にとらわれすぎなんだと思うな。いまのゴミ問題でも、“時間”や“便利”の結果だろ。ようするに江戸時代に宮中や大奥で使われていた物が、街中に出回るようになってさ、それが安い古道具屋に行くようになって、最後には雑巾になって床を拭いている。ボロボロになって最後は土になっていると。そこまで使っていたんだ、かつては。世界中が驚いていたじゃない、江戸にはチリひとつ落ちていないって。百万都市でゴミがないのは、どういうことだ、とね。あらゆるものをリサイクルしていたんだ。ウンコだって使っていた」

当たり前のことで、小さい頃から何度も聞かされた、「物を大切に」ということなんでしょう。確かに、便利という名のものとに使わなくなった(実はまだまだ使える)物を捨てて、新しいものを買う生活をしてきた日本人。わかってはいるけれど、ついつい、となってしまっていますよね。

「昔は良かった、昔に戻れ、なんて言っているわけじゃあないんだ。新しいものを作ったっていいんだ。ただ、人間が作ったものなら、最後まで使う。それでゴミはゼロだからね。使い切る覚悟があるか、という話さ。オレ、捨てないよ。だからあまり買わない。あっ、本は買っちゃうなあ。でも捨てない、ということを基準としている。いよいよ使わなくなったら、それを欲しがる奴を探す。これ、オマエ、使えってね。いらなくなったら、誰かにやれよ。ようするにはかしちゃダメだよ、とね。ペットボトルだって再生するにしても、また化石燃料を使ってダイオキシンを出すんだから、再生してもしょうがないんよね。だったらそのまま回収して使えって。洗うのが大変だとか言っているけど、洗えばいいじゃん。自分で作ったんだからさ、最後まで管理すればいいんだよ。うちにペットボトルあるよ。いらないよ。いくらでも使ってください」

考えてみれば、なんでもないことです。環境問題って、とても身近な問題で、とても身近なところから始めることで解決していくことができることなんですよね。最後はちょっと硬くなってしまいました。油井さん、お忙しいところ、ありがとうございました。すると油井さん。

「忙しい忙しいなんて言ってるのは、その辺のろくでもないサラリーマンだけさ。やっていることを好きになって、おもしろがっていれば、忙しいなんて言わないよ」

一同、納得。

 

 

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