オーガニックコットンが世界を変える。2

●貧しい人たちに支えられて成り立つコットン産業 ーー一般のコットンに使われる農薬の量はどの程度なのでしょうか? 前田剛: 直近のデータでみると、コットン農場は全世界の耕地面積の約2.5%なのですが、殺虫剤換算にすると全世 […]

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●貧しい人たちに支えられて成り立つコットン産業

ーー一般のコットンに使われる農薬の量はどの程度なのでしょうか?

前田剛: 直近のデータでみると、コットン農場は全世界の耕地面積の約2.5%なのですが、殺虫剤換算にすると全世界で散布される殺虫剤の約16%がコットンに使われているといいます(英国政府認定の慈善事業団体調べ。2007年)。
ーーそんなに多くの化学薬品が使われているのですね!

前田剛: 食品ではないから大量の農薬を使うという面が大きいのですが、大量生産による効率化もその一因になっています。最終製品には残留農薬はほとんどないという説もありますが、コットン製品の製造過程で大量の合成洗剤を使うから、という理由もあります。ユーザーへの影響はまずないというのが大方の見方ですが、アレルギー症状に悩む方など、肌がデリケートな方は反応することがしばしばあります。

一方でコットン農業従事者やコットン農場周辺住人への健康被害や、周辺環境の土壌汚染、大気汚染、水質汚染などの問題が広がっています。

世界のコットン農業に使われている農薬は年間20億ドル分で、そのうち8億1900万ドル分がWHO(世界保健機関)に有害物質に指定されているという英国の調査機関の報告書もあります。
ーーコットンの生産にはどのような人が携わっているのですか?

前田剛: コットンの全生産量の75%以上が貧困国で生産されており、コットン農業従事者の99%が発展途上国の人たちです。

アメリカのオーガニックコットン農場での収穫のもよう

コットン生産量が世界第5位のアメリカは、生産面で限りなく合理化、効率化しています。コットンに限らず農産物は大規模農場で栽培することがほとんどで、機械化が進んでいるため耕地面積や生産量に対し農業従事者の数は非常に少ない。農薬をまくにしても機械で自動化できているし、農家の人々も農薬の毒性に関する知識や管理方法に長けているので、彼らが直接農薬の被害を受けることは考えにくいのです。

ところが発展途上国の場合、コットン生産に従事するのはほとんどが貧困層で、アメリカと違って小規模な農家が多い。農薬を使うにしても防護器具などを用いることなく素手でそのまま散布し、直接体に吸い込むことになるわけです。文字が読めない方も多く、農薬の分類やリスク管理も万全ではない。つまり99%の貧困層の人たちに健康被害が集中している、という現実があります。

ーーオーガニックコットンの生産は農業による環境負荷低減や、生産者の健康問題を改善するきっかけになりうるのですね。

前田剛: そうですね。オーガニックコットンの生産は、環境問題だけでなく、生産者とフェアな関係で取引でき、貧困層の自立、児童労働問題等の解決にもつながり得る、多様な可能性を秘めています。

2009−2010年度のオーガニックコットン生産の上位10カ国を見てみると、1位がインド、2位シリア、3位トルコ、4位中国、5位アメリカ、6位タンザニア、ウガンダ、ペルー、エジプト、マリと続きます。メイド・イン・アースのアイテムに使うオーガニックコットン原綿の主な原産国は、インド、アメリカ、トルコ、ペルー、タンザニア、ウガンダ、そしてカンボジアです。

特に今後力を入れていきたいのが、「NPO法人地雷原を綿畑に!Nature Saves Cambodia!」と共同で、カンボジアの地雷原でオーガニックコットンを栽培し、地雷被害者を含む現地の人たちに手つむぎによる紡績、織りなどの就業機会をつくり、それをメイド・イン・アースが商品として販売するという「WITH PEACE(ウィズ・ピース)」というプロジェクトです。

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