信州産カラマツとアカマツの家具づくりへの挑戦。
松本の木工の里の職人さんたち

2010年冬に新発売したメイド・イン・アースの家具シリーズ。信州産のカラマツやアカマツの無垢材を使い、昔ながらの米糊で接着し、メイド・イン・アースの“まあるいせっけん”によるソープフィニッシュで仕上げています。そしていよ […]

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2010年冬に新発売したメイド・イン・アースの家具シリーズ。信州産のカラマツやアカマツの無垢材を使い、昔ながらの米糊で接着し、メイド・イン・アースの“まあるいせっけん”によるソープフィニッシュで仕上げています。そしていよいよ、この秋には満を持して“メイド・イン・アースのベッド”がデビューしました。

戦後にたくさん植えられた日本の針葉樹を活用し、日本の森林を維持するとともに、有害化学物質を使わない家具づくりで人々の暮らしを健やかにしていきたい……メイド・イン・アースと志を同じくする、信州は松本の家具工房を尋ねてきました。

●職人さんの高い木工加工技術に感嘆

私たちが松本を訪れたのは、澄んだ青空に一筋の飛行機雲が浮かぶ、気持ちのよい秋晴れの日でした。見渡す限りの高い山々に囲まれた松本盆地は、全国に名を馳せる木工の里でもあります。

メイド・イン・アースの家具をつくる城北木材加工に到着した時には、職人さんがベッドのフレームに使う部材をソープフィニッシュで仕上げているところでした。メイド・イン・アースのベッドは、フレームがカラマツ、布団を敷く床板がアカマツでできています。受注生産で職人さんが一つひとつ手づくりします。食用としてもたいへん美味しいエキストラバージンオリーブオイルをそのまま使ったメイド・イン・アースの“まあるいせっけん”。これを薄く削り、お湯で溶かしたせっけん水を木材に染み込ませ、表面を保護します。ソープフィニッシュは木材表面に塗膜をつくらないため、木のやさしい風合いとなめらかな質感が保たれ、木材の呼吸を妨げません。木目がはっきりした信州カラマツと、木肌が白く美しい信州アカマツの表情を生かす仕上げ方法なのです。

工房で不思議ないきものの形をしたキッズチェアー「ゆめジィ」を見つけると、メイド・イン・アースのヴィジュアルアーティスト・福田勝さんはにっこり微笑みました。昔ながらの米糊で接着したアカマツの板材を、福田さんがデザインした型通りに正確に素早くカットする職人さん。その技術力の確かさに、メイド・イン・アースのスタッフはみんな感動。「顔の部分に柾目がくるように、、柾目と板目を調整しながら板を張り合わせています。一枚板のようにしたいんです」という職人さんの言葉に、「いや、むしろ木目はランダムに張り合わせてみてもおもしろいんじゃないかな?」という福田さんのアイデアが飛び出すなど、新しい発見がある旅でした。

●カラマツとアカマツは特別な木だった!!

ゆめジィの板を加工する職人さん

日本では戦後、住宅や建築物の需要が高まり、成長が早く加工しやすい針葉樹が大量に植えられてきました。杉、檜が主ですが、長野県ではカラマツ、アカマツが植えられてきました。長野県の人工林(植林された林のこと)のうち、カラマツの割合が52%、アカマツが14%で、杉17%、檜・サワラが15%という構成です(2010年4月1日現在)。全国的にみると、杉が44%、檜が25%、カラマツが10%ですから、いかに長野県がカラマツとアカマツを大切にしているかがわかります。

木を丸太に切ると、木口には年輪が見えます。カラマツは年輪がくっきりと濃いのが特徴で、製材すると木目が強くはっきり浮き出てきます。年輪の線の部分は冬の間緻密に成長するから「冬目」、白い部分は夏にたくさん成長するため「夏目」といい、カラマツはこの冬目が強く線が濃いため、堅牢で耐久性が高いという特徴があります。

アカマツは樹皮が赤みがかっているためアカマツと呼ばれますが、製材するとうっすらと白く木目も控えめで、とても美しい木肌をしています。

アカマツとカラマツは、松材特有の脂が多く出て、ねじれがあったり、割れやすいことから「暴れん坊の木」と呼ばれ、細やかな木工技術を必要とする家具材には向かないと敬遠されてきました。そのうえ、木材の自由化以降、外国からの安価な輸入材に押され、戦後に植林された人工林の手入れが行き届かない状態に、長野県でも頭を抱えることになります。

手前がカラマツ、真ん中がアカマツ

そんな状況のなか、カラマツ材を有効活用しようと、日本で初めてカラマツの家具づくりに取り組んできた工房が松本市にあるのです。それが、メイド・イン・アースの家具をつくる城北木材加工さんなのです。社長の峯村茂さんは、家具職人のキャリアが80年にも及ぶ大ベテランです。

「くるいが少なくて素直な檜は、よい木。ヤニが多くねじれがあるカラマツは悪い木。そんな風に言われてきたが、子どもにはいい子も悪い子もないじゃないか。人間の扱いが悪いから木は暴れるんです。カラマツ特有の木目や節を、木の美点として見せる家具づくりをしたかった」

峯村さんは、1960年ごろからカラマツの家具づくりに挑戦しました。長野県が開発した木材の脱脂乾燥技術を生かし、家具材や住宅用材としてカラマツやアカマツを使おうという試みの一環です。しかし、高度で精緻な納まりが求められる家具に、「暴れん坊の木」を使うのは至難の業でした。6年ほど試行錯誤をしてようやく、カラマツの家具が出来上がりました。はっきりとした美しい木目を生かした椅子やテーブル、ソファなど、峯村さんの高い木材加工技術は、「木口をきれいに仕上げるのは難儀なことなのに、とてもていねいな仕上げ。城北木材加工を超える技術は見たことがない」と、長野県林業総合センター木材部長の吉田孝久さんが絶賛するほど。峯村さんが手がけた県産カラマツ材の学習机と椅子は、松本市や近隣自治体の小学校にこれまで約8500個以上の納入実績があるそうです。

●常識を打ち破るものづくりへの挑戦

大正生まれの峯村茂さん

メイド・イン・アースの家具づくりでは、オーガニックコットン製品と同じように、化学薬剤を使わず、素材の持つ純粋で無垢な力を最大限に引き出しながら、美しいデザインと使い勝手のよさを追求しています。家具はくるいにくく堅牢な広葉樹(ナラやクルミなど)を使い、接着にはボンドを用い、表面仕上げの際は木材の表面に塗装をすることがほとんどです。メイド・イン・アースでは、塗料や接着剤に使われる化学物質がカラダに合わないという人もいることを考慮するとともに、オーガニックコットン製品でもいっさいの化学薬剤による加工をしないものづくりの姿勢を貫くため、「化学合成の接着剤や塗料を使わない」、ある意味無謀とも言える家具づくりに挑戦したのです。

メイド・イン・アースのチャレンジを応援してくださったのが、家具デザイナーの伊藤陽子さん。「このような難しいオーダーだからこそ、取り組みがいがあると思いました。国産材を使うことで日本の森林を循環していきたいという思いにも共感しました。米糊やソープフィニッシュの提案を受け入れてくれて、なおかつ高い技術力を持つ家具工房となると、城北木材加工以外には考えられなかった」と振り返ります。

ゆめジィに続きベッド、そしてタンスなど、さまざまな展開が予定されているメイド・イン・アースの家具。オーガニックコットンと相性のよい、無垢で、やさしい質感、かつ日本の森林環境を守ってゆく家具の今後にご期待ください!

キッズチェアー「ゆめジィ」

http://item.rakuten.co.jp/earth/c/0000000920/

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