オーガニックコットン製品と液体せっけんの製造・加工工程を全てグリーン電力化しました。

メイド・イン・アースでは2007年秋より順次、本社・東京都内の直営2店舗(自由が丘・吉祥寺)の電力をグリーン電力で賄ってきましたが、2011年8月1日よりオーガニックコットン製品と液体せっけんの製造・加工の各工程での電力 […]

  • Tweet
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

メイド・イン・アースでは2007年秋より順次、本社・東京都内の直営2店舗(自由が丘・吉祥寺)の電力をグリーン電力で賄ってきましたが、2011年8月1日よりオーガニックコットン製品と液体せっけんの製造・加工の各工程での電力をグリーン電力に切り替えました。メイド・イン・アース代表の前田剛・けいこがオーガニックなエネルギーへの想いを語ります。

オーガニックコットン製品の製造で自然エネルギー市場を応援したい

—— メイド・イン・アースでは2011年8月1日から、全オーガニックコットン製品と液体せっけんの製造・加工工程のグリーン電力化を実現しました。

前田剛: 2011年8月1日はメイド・イン・アースにとって記念すべき日となりました。私たちのつくる全オーガニックコットン製品と液体せっけんの製造・加工工程でエネルギーシフトを実現できたからです。
オーガニックコットンの生地づくりの際に使う織り機や、縫製のミシン、精錬などに用いる機械を動かす場面など、製品づくりには電気が必要不可欠です。そこで、300品目以上の全オーガニックコットン製品と液体せっけんの製造に伴う全使用電力量を算出して、それに相当する分のグリーン電力証書をエナジーグリーン株式会社(代表取締役・飯田哲也氏)から購入し、製造・加工工程を含むオーガニックコットン事業のグリーン電力化を実現しました。ただ現時点では、海外産地でのオーガニックコットンの栽培と、綿を糸にする紡績の工程は除きます。
オーガニックコットン総合ブランドして製造・加工工程も含めた全アイテムのグリーン電力化への取り組みは、国内初になると思います。

—— 一般の人には「グリーン電力」という概念はわかりにくいので、簡単に説明してください。

前田剛: グリーン電力とは、太陽光、風力、小水力、地熱、バイオマス(木材や家畜の糞尿などの生物資源)、再生可能なエネルギー資源を用いて発電した電力のことで、電気そのものを生み出すとともに、化石燃料を使用しない、CO2排出量を削減できる、企業の社会貢献につながるという「環境価値」を生み出します。この環境価値を証書化して取引できるようにしたものを「グリーン電力証書」といいます。私たち事業者は、電力会社から供給される電力に加え、環境価値を上乗せした料金を証書の形で支払うことで、事業活動でグリーン電力を使用しているとみなすことができます。

前田けいこ: 先日(2011年8月26日)、「再生可能エネルギー固定価格買取法」が成立しました。今後、日本でも自然エネルギーが急速に普及していくことを望んでいます。自然エネルギーの発電所が増えれば、自ずと自然エネルギーの価格が安くなり、いずれ自然エネルギーの電力会社から直接電気を買えるようになる。いまはそれまでの移行期間ととらえて、ただ待っているのではなく、グリーン電力証書という形で自然エネルギーによる環境価値を買って、日本各地の自然エネルギー事業者を支援してゆければと思っています。

—— メイド・イン・アースではこれまでも本社と東京の直営2店舗(自由が丘・吉祥寺)のグリーン電力化に取り組んできましたね。

前田剛: メイド・イン・アースの直営店が自由が丘にできて今年で丸4年になりますが、そのころから同じビルにある本社オフィスと、自由が丘駅構内の駅看板のグリーン電力化を行ってきました。2010年10月には吉祥寺駅前の大型テナントビル「コピス吉祥寺」に直営2号店を出店し、テナントごとに出される毎月の電気料金に相当するグリーン電力証書を購入していました。
本社や店舗は私たちが直接使う電気なので、消費電力量を把握することはさほど難しくはなかったのですが、こと製造・加工工程となると、メイド・イン・アースの協力工場は何十社にもわたり、1アイテムをつくるにしても複数の工場が関わるため、エネルギー量を出すことは非常に困難だと感じていました。しかし、3.11の東日本大震災、そして東電の福島第一原発の事故もあり、難しいながらもいまこそ挑戦してみようと考えたのです。

グリーン電力証書を手にするメイド・イン・アース(株式会社チーム・オースリー)代表の前田剛・けいこ夫妻

 

●太陽、雨、風……自然の恵みを生かしたいという想い。

―― 縫製や製織、精錬などの各工程での電力を算出するのは難しかったようですが、どのように取り組んだのですか?

エナジーグリーン株式会社から発行されたグリーン電力証書

前田剛: 私はかねてから、メイド・イン・アースというブランドでつくる製品の全工程をグリーン電力で賄いたいと考えていました。しかし、タオル1枚とっても、製織、精錬、縫製などの各工程で協力工場が異なり、しかもその工場ではメイド・イン・アースの製品だけをつくっているわけではないので、タオル1枚ごとのCO2排出量や消費エネルギー量を算出することは、とても難しいのです。

そこで私たちが行ったのは、協力工場で使う半年分の消費電力量のうち、メイド・イン・アースが占める売り上げ比率を掛け合わせて、メイド・イン・アース製品の製造時に出る消費電力量を算出してもらいました。半年分の平均というかたちにしたのは、工場によっては少量生産製品を手がけていただいているところもあり、製造日数は数カ月のうち数日のみということもあるためです。今後はチーム・オースリーで書式を用意して、協力工場には半年に1度書式を更新して提出してもらう形をとります。月によって製造・加工時の消費電力量が多少上下しても、それよりも多めにグリーン電力による環境価値を買うことで、多少の電力量の変動はカバーできると考えています。

―― 震災や原発事故が全オーガニックコットン製品のグリーン電力化に踏み切るきっかけになったということはありますか?

前田剛: 今夏からの全製造・加工工程のグリーン電力化のタイミングは、もちろん震災や原発事故の影響が大きくあります。ただ直接的要因としては、自分たちが使う電力は自分たちで自給したいという思いを昔から持っていて、本社では太陽光発電で電力の自給自足をしようと真剣に検討していたからです。

かつて本社が入居していたビルは古いビルだったため、契約電力量が小さく、制限もありました。そのため、ブレーカーが落ちてパソコンがシャットダウンしてしまうようなトラブルもしょっちゅうでした。これでは仕事に支障を来すので、オフィスに太陽光発電パネルをつけられないか、かなり真剣に具体的な検討をしていました。その後現在のビルに移り、自然エネルギーに強い関心を持っているビルオーナーとの出会いもあり、本社オフィスと店舗のグリーン電力化がリアルな話として動き出しました。

それともう一つの理由として、私は元々太陽光発電の技術に興味があるというのも大きいですね。太陽の光があれば電気ができ、機械が動いたり、乾電池が不要になり、太陽の光で自ら機器を充電できるという可能性があるだけで、ワクワクしてくるからです。

2010年12月にはイベントで使用するために太陽光発電パネルを購入

前田けいこ: 前田は昔から太陽光発電、ソーラーパネルが大好きでしたね。エコプロダクツ展などの環境イベントに出展すると、いつもソーラー関連のブースに立ち寄っては話し込んで戻ってこない(笑)。

―― グリーン電力化にしたことで、お客様に伝えるメッセージに新しく変化はあるのでしょうか?

前田けいこ: 大いにあると思います。話は少しそれてしまいますが、先日、百貨店での催事のイベントがあって、広島へ行ったちょうどその日が原爆記念日でした。1日早めにいったので、ゆっくり原爆ドームや原爆資料館を見学することができました。広島や長崎で起こったことを知れば知るほど、原子力の脅威を感じました。いろいろな考え方があると思うのですが、私は平和利用でもなんでも原子力に頼るライフスタイルは絶対に無くしたい! と強く思って帰ってきました。

メイド・イン・アースでは、オーガニックコットンを通じて天然100%のやさしくやわらかい風合いを、できるだけそのままお客様にお伝えするような製品づくりをしています。天然・自然であることと、一度事故を起こしてしまうとすべての自然環境を壊してしまう原子力発電所の存在は究極的に正反対だと感じています。メイド・イン・アースがグリーン電力化することで、オーガニックコットン素材を愛してくださるお客様にも、私たちが消費しているエネルギーへの関心が高まるきっかけになってくれたらとても嬉しいです。

個人が家庭で使用するエネルギーを自然エネルギーに替えることは、一般家庭では難しいですよね。でも、自分が愛用しているものが自然エネルギーでできていれば、消費することで知らないうちにでも自然エネルギーを応援することにつながっている。メイド・イン・アースのオーガニックコットン製品であれば、オーガニックコットンの栽培がもたらす途上国の生産地の環境改善や労働者の生活改善にもつながっています。私たちが、いい循環をつくり出してゆけたら、買ってくださっている方々にも、自然と素敵なエネルギーが流れてゆく! そんな風に活動してゆきたいと思っています。

前田剛: 私たちはものづくりの会社として、自分たちの商品づくりを通じてエネルギーシフトを実践し、商品を通じてそれを発信することで、社会によい影響を与えていきたいと考えています。いま私たちはどんな電気を使いたいのか直接選ぶことはできないけれども、グリーン電力証書を購入することで自然エネルギーの環境価値にお金を支払い、支援することができます。私たちが自らの使いたい自然エネルギーや電力会社を選び、自然エネルギーで発電された電力を直接自分たちの家や会社で使うことができるようになるまでの、いまは移行期です。いま私たちにできる具体的な道として用意されているのが、「自然エネルギーで発電をした環境価値を買う」ということ。いずれグリーン電力証書が必要なくなる時代まで、私たちはグリーン電力証書を購入しながら、自然エネルギー市場を応援していきたいと思っています。
―― メイド・イン・アースの今後の展望と、オーガニックエネルギーのためにどんなチャレンジをしていこうと考えていますか?

前田けいこ: 私たちはこれまで、ものづくりの過程において、オーガニックコットンという原料、素材や、環境に負荷を与える化学薬剤を使用しない製造工程を追求してきました。同時に高品質の純液体せっけんを販売することでメイド・イン・アース製品を使ってくださるお客様に対しても、環境に負荷を与えないくらしを提案してきました。しかし、こと電気に関しては、コンセントにプラグをつなげれば当たり前のように電気が流れて、どのようにつくられた電気を使っているのかに対して自覚がいま一つ足りていませんでした。
電力のつくられ方について細かいことを知っていくに連れ、エネルギー問題についても自ずと目が向くようになってきました。オーガニックコットン製品をつくっているからこそ、エネルギーも含めてすべてが有機的に循環していくためには、何をしていくべきかを真剣に考えています。私たちの住む社会がオーガニックなエネルギーで満たされるようになればいいなと思っていますし、それに向けての実践を一つひとつ積み上げていきたいと思っています。

 

メイド・イン・アースが使用している電力は、飯田市を中心とした南信州の幼稚園・保育園や学校、公共施設に市民出資で設置した太陽光発電パネルでつくられている(写真提供:おひさま進歩エネルギー株式会社)

前田剛: 最終的な目標としては、海外産地での栽培から紡績、物流までを含めた全てのエネルギーの自給自足を目指していきたいと考えます。いまは日本国内の協力工場の方々に私たちの想いを伝え、つくり手の方々と想いを共有しながら、製法を含めたオーガニックの追求とグリーン電力化を確実に進めています。

私たちが自然エネルギーを「オーガニックエネルギー」と表現するのは、オーガニックコットンと同じように、誰が、どのような想いを持ってつくり、それがどのようにして運ばれてくるかがわかるからです。今回購入した南信州おひさま発電所の電気は太陽光から生み出されています。これまでも地熱、バイオマスとさまざまな自然エネルギーを導入してきましたが、グリーン電力証書を購入する際には自分が使いたい自然エネルギーの種類や発電事業者を選ぶことができます。今後はエネルギーも、食べ物も、モノも、「顔の見える」関係になっていくのではないでしょうか。

私たちはまた、現在「NPO法人地雷原を綿畑に!Nature Saves Cambodia!」とともに、カンボジアの地雷原だった土地から地雷を撤去して開墾し、オーガニックコットンの畑として再生するとともに、地雷被害者の方々の生活支援と生業の復活に向けて取り組んでいます。NPO法人地雷原を綿畑に!Nature Saves Cambodia!とのコラボレーションブランド「WITH PEACE」のカンボジアクロマーは、メイド・イン・アースの人気製品で、現地では手紡ぎ・手織りで電力を使わずに生産しています。カンボジアの工房がいずれ大きくなって工場が必要となる時には、電力をローカルな自然エネルギーで賄うことができるように、いまからその時に向けてプロジェクトを立ち上げようと考えています。

また、近いうちに、チーム・オースリーの社員・協力スタッフも含めて、個々人ができる範囲でエネルギーシフトをしていこうと思います。まずは我が家(前田家)の消費電力をグリーン電力化していき、スタッフを中心にその輪を広げ、いずれグリーン電力証書のいらない、誰もが自然エネルギーを直接選んで買える時代をみんなでともに創っていきたいと思っています。

(了)

各特集最新記事一覧へ