子宮を温めて、「笑顔」で赤ちゃんに来てもらおう! 産婦人科医・池川明先生インタビュー【前編】

6月10日に開催する「第4回布ナプキンフェスタ2017」のスペシャルゲストは、「胎内記憶」で有名な産婦人科医で医学博士の池川明先生です。長年、女性の妊娠、出産に寄り添ってきた池川先生は、日用品に含まれる有害物質と女性の身体の関係性にも詳しい方です。メイド・イン・アースのブランドマネージャー・前田けいこが、30年以上産科医療の最前線で妊娠・出産に携わってきた池川先生にインタビューしました。

  • Tweet
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

■経皮毒が子宮を傷つける?!

前田けいこ: 「赤ちゃんが両親を選んで生まれてくる」という「胎内記憶」の第一人者として有名な池川先生に、ぜひ一度お話をうかがいたいと思っていました。メイド・イン・アースではベビー服やマタニティのアイテム、そして布ナプキンをつくっていて、女性の月経や妊娠、出産と近いところにいるオーガニックコットンブランドです。池川先生は胎内記憶のみならず、経皮毒についてもたいへん詳しく、著書も出していらっしゃるので、ぜひメイド・イン・アースの布ナプキンフェスタにゲストとしてお招きしたいと考えていました。

布ナプキンフェスタには、生理について悩んでいたり、出産を希望される方も多くいらっしゃいます。私は、生活用品や化粧品などに含まれる化学物質と、女性の心身の変化に何か関係があるのではないかと考えているのですが、池川先生はどうお感じになっていますか?

 

池川明先生(以下、敬称略): まず、経皮毒についてお話しますね。
経皮毒とは、皮膚を通して化学物質などの有害なものが体内に入ってくることを指します。私たちが普段から使っている、シャンプー、リンス、洗剤、化粧品や歯磨き粉などの日用品にも、合成界面活性剤などの化学物質が使われており、それらがミクロな小ささで体内に入り込んでくると、肌のトラブルやアトピー、化学物質過敏症などを引き起こす原因の一つになると考えられます。

経皮毒と月経の関係性ですが、デトックス(毒素排出)という観点からすると、経皮毒の影響もあり、排出しなければならないものが増えて、現代女性の経血の量は増えていると感じます。

子宮の内側は子宮内膜で覆われており、生理周期に合わせて厚みを増していきます。ただ、受精卵が着床しないと、子宮内膜の組織が剥がれ落ちて体の外に出ます。これを月経と言います。

経血には、子宮内膜の組織が含まれているので、単なる血液のような鮮やかな色ではなく、本来は暗赤色でドロッとしています。月経中は、酵素の働きによって血液を凝固させる因子が破壊され、子宮内膜が経血の形で溶け出ていきます。ところが、ストレスなどで体調不良になると、女性ホルモンのバランスが崩れて、子宮内膜が必要以上に厚くなって、内膜の剥がれる量が増えて経血量が増えます。経血の中に塊が混じるということは、経血量が多くなり、血液を凝固させない因子が足りなくなることが原因と言われています。

私は、こうしたストレスの原因の一つに、経皮毒が影響しているのではないかと考えています。

布ナプキンを使っている方は、自分で洗濯をするので、必ず経血をチェックしますよね。経血がドロッとしているとか、赤いとか、塊があるとかないとか、洗濯時に確認をすることで、月経不順や経血の量の変化にも気付きやすくなります。布ナプキンを通じて、自分の体調管理につながるんですね。

 

けいこ: メイド・イン・アースの布ナプキンの愛用者には、月経不順や生理痛がひどいといった相談をされる方が多いのですが、逆に経血量が少ないことを心配される方もいます。経血の少なさには、何か問題があるのですか?

 

池川: 経血量が少ないぶんは、体調にはほぼ影響はないと言えます。それよりも定期的に月経がくることが大切です。婦人科系の病気で子宮の内膜同士が癒着して月経がなくなる病気があります。その場合は治療が必要になりますが、定期的に月経がきて、量が少ない分には問題がありません。

 

けいこ: 経皮毒について、もう少し詳しくお聞かせください。出産時に羊水からシャンプーの匂いがするという話を聞くのですが、本当ですか? 懐疑論も結構あるのですが、池川先生のご著書にも記載があり、気になってお聞きしたいのです。

 

池川: 以前、帝王切開の手術で出産した方で、羊水からシャンプーのにおいがした方がいるというのは、私が実際に経験したことです。その妊婦さんは、朝晩2回、大手化粧品メーカーの普及品のシャンプーを使っていて、本人は気に入って使っていたそうですが、界面活性剤が4、5種類入っている製品で、香りも強かったので、皮膚を経由して全身に回って、胎盤にたまっていたのでしょうね。だから、羊水からシャンプーのにおいがしたのではないか思っています。考えてみれば、大学時代に帝王切開したときにもとても臭い羊水のことがありました。その時には化学物質で汚染された羊水が悪臭を放つとは考えてもみませんでしたが、今なら理由がわかるような気がします。

胎内記憶を持つ子どもと話をした時に、「お腹の中にいる時に、お風呂の入浴剤のにおいがきつかった」と語った子もいるほどです。

実際、羊水からのシャンプーのにおいについては、科学的な検出は難しいし、私もその現場で羊水を調べたわけではないから、確実なことは言えません。経皮毒についての懐疑論があることは承知していますが、ただ、私の実体験として強烈な印象が残っています。

 

けいこ: そもそも、池川先生が経皮毒に注目するきっかけは?

 

池川: 水俣病などで水銀や重金属が体に入っていくことは知っていましたが、化学物質が皮膚から体内に入ってくるとは考えていませんでした。『医者も知らないホルモンバランス』で知られるジョン・R・リー博士の著書を読んだり、経皮毒の概念を世に広めた稲津教久先生と竹内久米司先生と出会って意気投合して、経皮毒に興味を持ち始めたんです。

そのうち、胎内記憶を発見して、子どもに赤ちゃん時代の話を聞いていると、「お腹に入っていったときにイヤなにおいがしたよ」とか「汚いお腹の中はイヤだなと思った」というエピソードを聞くようになりました。「赤ちゃんがイヤがらないお腹の環境とは、どのようなものなのだろう?」と考えるようになっていきました。

ストレスは体を錆びさせる原因になります。ストレスの原因の一つに経皮毒があり、石油化学製品や合成界面活性剤を使っているシャンプーやリンスなどの日用品の中には、体を痛めつけるものがあります。生理用の使い捨てナプキンも、石油化学製品が使われているので、それが体に合わない人もいます。外性器の粘膜は化学物質の吸収力が高い臓器の一つなんですね。環境ホルモン的なものが含まれていると、女性ホルモンのバランスに影響するし、卵巣や子宮を傷つけてしまいます。
けいこ: 真面目な妊婦さんは、食べ物や化粧品などにもすごく気を使いますよね。それによって経皮毒を防ぐことにつながるのでしょうか。

 


池川: 妊娠中にジャンクフードを食べたくなる人って、時々いますよね。どう考えても妊婦さんの体にも赤ちゃんにもいいものではないのに、子どもに聞いてみたら「お腹の中にいるときにフライドポテトを食べてみたかったの」と答える子が意外といるんです(笑)。だからね、妊娠中に、体に悪いと言われているものでも食べたくなったら、「赤ちゃんに聞いてみて」と言っています。

以前、私のクリニックでは、いいお産のために食事について指導したり、経皮毒の観点から合成化学物質の含まれる日用品の使用に警鐘を鳴らし、使用を制限していた時期がありました。だけど、妊婦さんたちが如実にイライラし始めてね。後ろめたい気持ちを持たせるのがよくないと思って、「赤ちゃんに聞いてみてくださいね」と方針転換したんです。

妊娠中の体重制限も同じことだと思います。周産期死亡率は妊婦さんの体重増加が9kgだと最も低いので、9kg増加までに抑えていきましょうというのが指針になっています。それでも、平均的な体重増加は12~13kgくらい。「9kg」という指標にしばられて歯をくいしばることが、豊かな妊娠生活を送ることとイコールにはならないのです。

経皮毒や化学調味料はもちろん心配ではありますが、人間は意外と強く、デトックスできるんですよね。妊婦さんにも多様性があり、どんなに化学物質が入っている化粧品などを使っても平気な人もいれば、微量の化学物質に反応する人もいる。どんなに自然で安全性の高い製品でも合わない人だっています。だから、一概に「少しならば使っても大丈夫」とも言えないし、「微量でも化学物質が含まれた商品は使ってはいけない」とも言い難いのです。

だから、私は「どうやったら幸せな妊娠生活を送れるか」を基準に、赤ちゃんと対話をしながら過ごしていくのがいいのではないか、と思っています。

 

【~後編に続きます~】

 

 

 

【プロフィール】
池川明(いけがわあきら)
1954年、東京都生まれ。帝京大学医学部卒・同大大学院修了。医学博士。上尾中央総合病院産婦人科部長を経て、89年、神奈川県横浜市に池川クリニックを開設。「出生前・周産期心理学協会(APPPAH、The Association for Pre‐&Perinatal Psychology and Health)」の日本における元アドバイザー。2001年9月、全国保険医団体連合医療研究集会で「胎内記憶」について発表したのが新聞などで紹介され、話題になる。中間生記憶や前世記憶についても調査し、そこから考えられる豊かな人生について、お産を中心に提唱している。

『ママのおなかを選んできたよ』(二見書房)など、著書多数。

 

【インフォメーション】

「第4回布ナプキンフェスタ2017」
日時:2017年6月10日(土)9:00?18:00
会場:ザ ルーム代官山
東京都渋谷区恵比寿西1-34-17 Za HOUSEビル2F
東急東横線「代官山」駅より徒歩1分/JR山手線・東京メトロ日比谷線「恵比寿」駅より徒歩8分
入場料:事前申し込み無料/(当日1000円)

布ナプキンフェスタ2017

 

 

 

 

 

 

各特集最新記事一覧へ