「僕たちがオーガニックコットンを選択する理由」
対談ゲスト:河名秀郎さん(ナチュラルハーモニー代表)

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■ 世界のコットン栽培の現状

 

河名: メイド・イン・アースさんとは、かなり古く、20年近いお付き合いですよね。はじまりは、まだ僕が世田谷区下馬のナチュラル・ハーモニー1号店で自らレジを打っていた頃。オーガニックコットンの販売を始めるというメイド・イン・アースさんが訪ねて来たんですよね。

当時はオーガニックコットンという名前が普及し始めていたけれど、農薬を使っているかどうか詳細がよくわかならなくて、食品の世界よりもずいぶん規定が緩いなと思った記憶があります。でも最近は、食品よりもかなり厳密に取り組まれている姿勢を感じています。今日はコットンの実態をいろんな角度からお聞きしたいと思います。

始めに、コットンはどこでつくられているのですか?

 

河名秀郎氏(左)と前田剛。対談は和気あいあいと進んだ

河名秀郎氏(左)と前田剛。対談は和気あいあいと進んだ

 

前田: 今現在は、基本的にコットンは日本ではつくられていないんです。工業生産のデータ上では0%。コットンの7〜8割は、アジアや南米、アフリカなど貧しい国で栽培されていて、あとの2〜3割が欧米産です。

オーガニックコットンに関して言うと、一番多く生産しているのはインドで、続いてトルコ、中国。現在、18カ国でつくられています

2011-2012年度の世界の収穫量)。

インドはオーガニックコットンの生産量も多いですが、大半は通常の農薬を使用している農場です。そこでは、児童労働や農夫たちの自殺といった様々な問題もはらんでいます。

貧困層がコットン栽培に関わっているケースがとても多くて、外国の企業からコットン栽培が儲かるからと勧められ、始めに除草剤や殺虫剤を買わされて借金を抱えてしまう。識字率が低いために、危険も知らずに使い続け、健康を害してしまうこともあります。汗水流して収穫した綿は安く買い取られ、借金を返済すればわずかなお金しか残らない。それで自殺してしまう貧しい農家さんもいます。

 

河名: でも世の中では、大手のアパレルメーカーもどんどん取り入れるなど、オーガニックコットン製品が増えている気がするのですが。

 

前田: 大手の量販店やメーカーもオーガニックコットンを取り入れてきているので、日本の市場では増えているかもしれません。ただ、大手が原料の一部としてオーガニックコットンを取り入れていても、「ロハス」や「スローライフ」といったブームに乗って参入してきたメーカーや小売店の中には続かなかったところもありました。だから全体としてオーガニックコットンが増えているか減っているかはちょっとわからないですね。

 

■ 本物のオーガニックコットンの見分け方は「価格」?

 

河名: 最初に僕は、20年ほど前はオーガニックコットンの基準が緩かったと言いましたが、最近はかなりハードルが上がっていますよね。

 

 

ナチュラル・ハーモニーとメイド・イン・アースは奇しくも同じ頃創業した。そんなエピソードも語られた

ナチュラル・ハーモニーとメイド・イン・アースは奇しくも同じ頃創業した。そんなエピソードも語られた

 

前田: メイド・イン・アースは、最初から栽培時の有機肥料以外「何も使わない」という意識でスタートしました。

オーガニックコットンに対して「認定農薬は使っているんじゃないですか?」とか「農薬を使わないために遺伝子組み換え種子を使っているよね」という質問を受けたり、誤解されていると感じる機会はよくありますが、オーガニックコットン業界では、

・   合成化学肥料や農薬を使わずに栽培されていること

・   遺伝子組み換えではないこと

・   フェアトレードであること

という定義があり、認証機関は異なれど、この3つは共通しています。フェアトレードはあまり謳われていないのですが、その精神はちゃんと息づいていて、児童労働や栽培農家の健康被害が無いように配慮されています。

 

河名: 昔は共通でなかった基準が統一されてきているのですね。栽培についてはよくわかりました。その後、綿を摘んでから製品になるまでのことも気になります。オーガニック認証は栽培だけのことですか? その後の製造プロセスはメーカーによってそれぞれ違うのでしょうか。

 

前田: 食品には農水省の有機JAS認定がありますが、オーガニックコットンに関しては日本国内では法律が無いんですよね。2010年にやっと経産省の外郭団体によってガイドラインができましたが、「製品全体に占めるオーガニックコットンの混用率を表示しましょう」という程度です。例えば、一般のコットンを製品に混ぜて使用していたら「オーガニックコットン60%、コットン40%」といった表示ですね。

今でも混用率の表記に関しては努力目標で、義務化はされていません。法律で定められているのは、コットンやウールなど素材の表記のみ。例えば、オーガニックコットンを10%しか使っていないのに「オーガニックコットン」とうたっている製品もあるという噂を聞くことがあります。

 

河名: 中には、信じられないような低価格でオーガニックコットンが売られていることもありますよね。実際に製品をつくっている前田さんにとって、そのような価格はありえますか?

 

前田:ありえないですね(笑)。一般的に言われているように、あまりにも安かったらまずは調べてみるのがいいかもしれません。あとはお店やメーカーに聞くのがいいと思います。

 

河名: 今日は僕もオーガニックコットンのジーンズを履いています。安いところだと4、5000円で買えるものもあるけれど、これは30,000円ぐらい。それでもディスカウントで買ったけど(笑)、価格というのは判断軸としてはわかりやすいですね。

 

前田: あとは、オーガニックコットン100%であっても、下請け工場の労働環境などに負担をかけながらも大量生産で生産効率を上げればコストは安くなり、価格は下げられますよね。

変な言い方をすれば、安いオーガニックコットン製品を買ってもコットン自体は有機栽培だから、地球環境のためにはいいかもしれない。だけど、製造工程で薬剤や合成洗剤を使って環境を汚していることもあります。メイド・イン・アースは、製造部分も追求していきたいんです。製造に効率化を求めるのはもちろん必要だけれども、薬剤に頼らずいかに工夫していくか。ただし、そうすると人手や時間もかかり、当然価格は上がる。一般の消費者ではわからない部分も多いので、その部分をどう伝えていくかがポイントだと思いますね。

 

「ナチュラル&ハーモニック プランツ」では、メイド・イン・アース製品を多数取り揃えている

「ナチュラル&ハーモニック プランツ」では、メイド・イン・アース製品を多数取り揃えている

 

河名: 栽培のときの農薬はかなり使っていますよね。ひと昔前は、世界で散布される農薬の4分の1がコットン栽培に使われていると言われていたけれど、最近はどうですか?

 

前田: ここ数年は世界中で散布される殺虫剤の16%がコットン農場に使われていると言われています。コットン農場は世界中の耕作地のたった2%ぐらいしかないのに、そこに16%も使われているのは多すぎる。

遺伝子組み換えで言えば、殺虫能力のある遺伝子を組み込んだコットンの栽培も進んでいて、そのために殺虫剤の使用は減るでしょうし、これからもっと減るかもしれませんね。

 

■ 実は薬剤漬けの製造工程

 

河名: 農薬の次に、工場での薬剤処理についてお聞きします。一般的にどんなことをしているのですか?

 

前田: 収穫したコットンを紡績後(糸にする工程)、合成洗剤で石油系の溶剤で油分やロウを落とします。その後は、脱色。クリームがかったコットンの色を染色しやすいように白くします。そこまででコットンは傷つけられてどんどんバサバサの状態になってしまいます。つぎに織って生地にする段階では、縦糸が切れないように合成糊を使って丈夫にしたり、滑りをよくするためのワックスも使います。

その他にも防縮加工や、柔軟加工、形状安定処理とか……。製品化までの全工程の中で使われる薬剤は数千種類とも言われています。一般的には薬品を使って風合いを保つことを素晴らしい技術だととらえられることも多いんですよ。

僕がもったいないと思うのは、もともとコットンが持っている天然のパワーを奪うようにして効率よく大量につくっておきながら、あたかも本来のコットンの風合いであるかのように加工していること。

天然のコットンの風合いのようなまやかしの加工を施しているから、洗濯を重ねて薬剤が落ちれば、布が固くなってしまう。そのために家庭でも合成の柔軟剤を使うという悪循環になっているんです。

コットンにはもともと天然の油分があります。天然のせっけんを使えばその油分がゆっくりと抜けていって自然な良い風合いになるのに。残念です。

お客様の中には肌が弱い方やアレルギーの方も多く、メイド・イン・アースは縫製の糸までオーガニックコットンにこだわっています。オーガニックコットンメーカーでも縫製の糸までオーガニックにするのはなかなか難しいことですが、糸に肌にあたってかぶれてしまうお客様もいますし。

布ナプキンに関しても、肌に直接触れる部分だからこそ、オーガニックコットンが求められていると感じています。

会場は多くの人たちで賑わった。中にはオーガニックコットンの製造工程に使われる化学薬剤のことを知らなかった! という人も

会場は多くの人たちで賑わった。中にはオーガニックコットンの製造工程に使われる化学薬剤のことを知らなかった! という人も

 

河名: 栽培や加工の過程での区別が分かりづらくなっているという印象があります。例えば、表示でオーガニックコットンと表示されていても一般のコットンと混じっていたり、加工過程で薬品を使っているなど、いろんなパターンがありますよね。

 

前田: まず、オーガニックコットンかそうじゃないか。次に、オーガニックコットンと表記されている商品でも一般のコットンが混用されていないかどうか……まず100%と書いてあれば間違いないと思いますが。そして、たとえオーガニックコットン100%でも加工過程で薬剤処理されているのかどうか。

特にどのような加工がされているのかは、一般的に目に見えにくく、ベールに隠されている部分ですね。細かくなりすぎて表示ができないというのは、僕たちにとっての反省点でもあります。

薬剤使用には、効率化よりもむしろ製品の安定化という理由が大きいです。製品にばらつきがあれば、消費者には買ってもらえません。中には消費者に考え方を変えてもらわなければ、と言う人もいますが、実情を知らされていないのですから、無理な話です。

 

河名: 消費者が実状を知る環境があって、それぞれが自分の選択をできるようになることが大切だよね。

 

前田: 知った上で、ライフスタイルに合わせて、自分が何を選ぶのか決められることが大切だと思います。

自分の生活を100%オーガニックコットンにするのは難しくても、休日はオーガニックコットンを着ることならできるかもしれない。たとえ様々な加工をされている製品であっても農薬を使わないオーガニックコットンを選ぶことで地球環境への貢献になるし、肌が弱い子どものためにと考える人は、製造工程にまで注意するでしょう。

 

■ WITH PEACEは最高ランクの自然栽培綿!

 

河名: そうそう、カンボジアの話についても教えてください。

 

前田: カンボジアにはまだ600万発とも言われる地雷が埋まっています。その地雷原から地雷を除去した跡地に、コットンの種を撒いて栽培しています。オーガニックコットンと言っていますが、有機の農薬や肥料すら使っていません。

WITH PEACEはこの自然栽培の綿畑から

WITH PEACEはこの自然栽培の綿畑から

 

河名: じゃあ自然栽培なんですね。

 

前田: そうです。もともと地雷被害者の支援活動をしていたNPO法人Nature Saves Cambodia–Japan(NSCJ)に共感して、メイド・イン・アースは2009年からずっと一緒に活動を続けてきました。そして、2010年にはWITH PEACEというコラボレーションブランドをつくりました。地雷被害者の生活支援と経済的な自立を目指した活動で、僕たちも現地に行って栽培や紡ぎ、織り等の指導もしています。

現地の人たちはやる気もあって、品質を良くしたいという気持ちもあるし、僕たちもちゃんと技術を伝えています。おばあちゃんたちには、内戦前にやっていた手仕事の技術を思い出してもらって、糸紡ぎをお願いしたりしています。

 

河名: 商品は出来てきているのですか?

 

前田:はい。今日僕が巻いているクロマーもそうです。カンボジアにはもともとクロマーと呼ばれる万能布があり、最近、現地の土産物屋で売っているクロマーは化学繊維のものが多いですが、WITH PEACEのものは手紡ぎ手織りです。現地の植物での染色の指導もしていて、品質もどんどんよくなっています。カンボジアでは、クロマーやタオル、キッチンクロスなどの織物をつくっています。

 

河名: カンボジアプロジェクトは、我々が言うところの結果論的自然栽培(笑)で、たまたま肥料も農薬も使わずに5年も収穫でき続けているんでしょう? ということは、コットン栽培も肥料が無くてもできるということですよね。

 

前田: そうですね。気づいたら農薬も肥料も使っていなかったという感じで。お金もないし使う必要も無かったというか。元々NSCJも、何十年も農作物の栽培ができなかった地雷原に、わざわざ農薬や化学合成肥料を入れるのはもったいないという発想だったんです。でも、河名さんとお話しして、そういえば何も入れてないのになんでオーガニックコットンて言っていたんだろうって(笑)。試験的にも何も入れない栽培がどこまで続くかやってみようかと思っています。ただ、カンボジアの地雷被害者たちの生活を支えることは常に頭に置かなければいけないのですが。

 

河名: 種も自家採取でしたよね?

 

前田: はい、今年で3年目ぐらいです。

 

河名: 世界ではコットンの種がほとんど遺伝子組み換えになってきています。その前はF1種でした。カンボジアでの自家採取の取り組みはかなり先進的で、世界の見本になり得ると思います。世界に表明できるチャレンジの場だと思うので、指導している側にもカンボジアの人たちにもその意義と意味を感じてほしい。リーダーがコンセプトをしっかり出して「世界で一番悪い形があった場所だからこそ世界で一番良い形を示そう」ということでやってもらえると嬉しいな。

 

前田: ぜひその方向でチャレンジしていきたいと思います。

 

■ コットンの生産はこれからの最先端!

 

前田: 僕たちは日本でも10年以上コットンの取り組みをしていて、日本の綿栽培を復活させたいと思っています。

 

河名: 日本の綿花の生産量は数字的には0%。実はちょっと前までは、僕もコットンは乾燥地帯が生産地であり、日本みたいな高温多湿の国には合わないんじゃないかという持論を言ってきました。でもいろいろ調べて、コットンにはアジア綿と洋綿という種類があることを最近になって知ったんですよ。アジア綿というのは高温多湿な土地に向いている品種だと聞いたのですが?

 

前田: 染色体の数も違うので交配もしません。アジア綿は雨にも強く、下向きに花をつけているのは上にあるガクで雨をよけて種を濡らさないためではないかと言われています。

 

河名: なるほど。それぞれの土地にあった綿を栽培することは可能なんですね。プランターでもできるんですって?

 

前田: はい。メイド・イン・アースではお客様に種を差し上げたりもしていて、みなさんに家庭のプランターや植木鉢で栽培してもらっています。

学校や幼稚園で種を撒いて育てて収穫してもらった綿で、紡ぎのワークショップをやったこともありました。なかなかそういう体験をできる場は少ないので、今後も少しずつでもやっていきたいと思っています。

日本だと種を撒くのが4〜5月ぐらいで、早ければ10月ぐらいから収穫できます。長いときは1月ぐらいまで収穫できます。だから、一般的なコットンは枯れ葉剤を撒いてしまうんです。一気に枯らして一気に収穫できるように。オーガニックの場合は、大規模農場では機械で刈り取ることはあっても、枯れ葉剤は撒きません。非効率だとしても何度も刈り取ります。

 

河名: 家庭菜園みたいに、ちょっとの面積でも自分でつくってみて、個々が少しずつでもいいからコットン栽培にふれられるといいですよね。繊維を自分で生産してみるのって、これからの時代に合っている気がするんですよね。

ふわふわの綿花

ふわふわの綿花

 

前田: そうですね。メイド・イン・アースでも種をお客様にプレゼントしたときに、収穫した綿はどうしたらいいですかという質問を受けることが多いです。綿から種をとる綿繰りのワークショップや、家庭菜園で収穫した綿を送ってもらって、メイド・イン・アースがその綿を入れたものづくりをしてお客様に還元するとか、何かしていきたいと思っているんですよね。プランターや鉢ひとつでも良いから、そこで子どもたちに綿にふれてほしい。今の子どもたちに「洋服って何からできてる?」って聞くと「ペットボトル!」って答えるんですよね(笑)。それを変えていきたいなと思っています。

 

河名: ナチュラル・ハーモニーは、全ては買うものとは決まっていないと言い続けてきたんですよ。例えば、味噌や野菜や米。ましてや衣類なんて、自分でつくるものから一番遠いと思われていて、買うものだという前提があったと思います。でも、最近味噌づくりを家庭でする人がとても増えています。特に震災後に、加速度的に生産と消費の場が近くなっていると感じています。今まであえて自分が近づかなかったものでも、一歩踏み込んでみたときに楽しさを感じる。知れば知るほど興味が出るじゃないですか。今日のコットンの話もそうです。ただ、たまたま今までは知らなかっただけなんですよね。

ナチュラル・ハーモニーでは発酵醸造の菌についてお客様にお話をさせてもらうことが多いですが、まさか市販の味噌をつくっている菌が、人工培養で人間の都合で操作されたものだってみなさん知らないわけですよ。そういう実態を知ると「えー!」と思うんですよね。

僕は食、前田さんは衣類のプロとして、情報を公表していって、あとは「みんなはどう思う?」と、消費者のみなさんにその場に応じてチョイスしてもらえる世界を一緒に築いていきましょうよ。

 

前田:ぜひよろしくお願いします。知る場がないというのが一番の問題だと思いますね。ぜひ一緒に情報を発信していきたいです。がんばります。ありがとうございました。

 

★ information

Natural & Harmonic PLANT’s

神奈川県横浜市都筑区中川中央1-25
ノースポートモール内 B2

OPEN 10:00-22:00(レストランのみ11:30-21:00、土日祝は22:00まで営業)

 

http://www.nh-plants.com

 

「春 コットンフェア」など、プランツでは様々なテーマで「本物の素材」を伝えている

 

 

 

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