「個人でできるエネルギーシフト」
対談ゲスト:竹村英明さん(エナジーグリーン)

  • Tweet
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

メイド・イン・アースは2011年8月より全てのオーガニックコットン製品と液体せっけんの製造・加工の全工程をグリーン電力に切り替えました。そして、2012年2月からは、直営オンラインショップで個人向けグリーン電力証書「えねぱそ」の取り扱いを開始しました。
東日本大震災以降、原発や化石燃料に頼らず、自然エネルギーにシフトするライフスタイル、エネルギー社会を目指したい……そんな声が高まっています。いまはそれがかなわないと思っている方にも、選択肢があります。市民も、小さなお店を営んでいる方でも、誰もがカンタンにエネルギーシフトできる方法が、グリーン電力証書です。
日本のグリーン電力証書発行の先がけで、日本で初めての個人向けグリーン電力証書「えねぱそ」を発売した、エナジーグリーン株式会社の竹村英明さん。メイド・イン・アース代表の前田剛が、竹村さんと足下からのエネルギーシフトについて語り合いました!

 

●グリーン電力証書って、何だろう?

前田剛(以下「前田」): 私たちメイド・イン・アースがグリーン電力に取り組み始めたのは、2007年のことです。メイド・イン・アースの直営店「ホーム・ルーム自由が丘」ができて間もなくのことでした。

直営店のある自由が丘の駅構内に内照式の看板を出すことになったのですが、LED電球を使うなどして環境への配慮はあるものの、明るいうちから電気を使うことに私はどうしても抵抗がありました。その時に、どうせ電気を使わなければならないのであれば、以前から知っていたグリーン電力証書の仕組みを使って、持続可能な自然エネルギーによる電力を使えないかと考えました。そのことがきっかけで、自由が丘の本社オフィスと直営店、2010年にオープンしたコピス吉祥寺店の電力はすべてグリーン電力で賄うようになりました。

メイド・イン・アースでは地球環境や未来世代に負荷を与えず、持続可能な未来をつくることにつながるオーガニックコットン製品をつくっています。私たちがつくる商品は、エネルギーも含めて納得のいく製法でつくりたい。つまり全工程をグリーン電力にしたい、という気持ちは以前から強くありました。しかし、協力工場が何十社もあるため、全工場のメイド・イン・アース製品製造時に使う電力を把握するのは難しいと、製造工程のグリーン電力化が後回しになっていました。

そんな矢先に3.11の東日本大震災、東電福島第一原発の事故が起こりました。そのことが大きなきっかけとなり、エネルギーとライフスタイルのシフトを自ら実践し、お客様にもお伝えしていこうという気持ちをますます強くしました。そして、2011年8月1日より、メイド・イン・アースでつくる全オーガニックコットン製品と液体せっけんの製造・加工の工程をグリーン電力で賄うことになったのです。そのグリーン電力証書は竹村さんが副社長を務めるエナジーグリーン(株)さんから購入しました。

 

photo:120210enepaso01.jpg:メイド・イン・アースの本社(東京・自由が丘)で対談する、竹村英明さん(左)と前田剛代表

竹村英明さん(以下敬称略): メイド・イン・アースが早くからグリーン電力に注目し、積極的に事業活動に活用していることに、先見の明を感じます。ほとんど全てのアイテムをグリーン電力でつくるという企業は、日本全体をみてもなかなかありません。

日本でグリーン電力証書が誕生したのは2000年のことです。エナジーグリーンの元代表取締役で、NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)の代表でもある飯田哲也が中心となって仕組みをつくりました。

グリーン電力とは、太陽光や風力、小水力、バイオマスなどの自然エネルギーによってつくられた電気のことで、電気そのものの価値のほかに、CO2を排出しないなどの環境価値を持っています。環境価値の部分を、公的に認められた認証機関が認証して、証書という形で環境価値を取引することで、自然エネルギーの発電所・事業者に環境価値分のお金が入るという仕組みです。グリーン電力証書を買った電力の需要家は、グリーン電力の環境価値によってCO2を削減したり、自社製品の付加価値にしたり、環境・社会貢献活動の一環としてPRするなどして役立てています。

私がグリーン電力証書の事業に本格的に携わるようになったのは2005年のことで、長野県飯田市で市民出資による太陽光発電の普及事業を担当することになってからです。太陽光発電システムの設置費用を市民出資で行い、太陽光発電による売電収入とグリーン電力証書で環境価値を売ることで出資者へ還元していくという仕組みなのですが、環境価値の概念を行政や出資者に理解していただくのが非常に難しかったのを覚えています。

 

前田: 確かに、電気そのものと環境価値が別々に生まれ、別扱いで取引できるということを理解するのは難しいですよね。

 

竹村: 自然エネルギーでも、化石燃料による火力発電でも、原子力発電所による電気でも、できあがった「電気」は「電子の流れ」であって、まったく同じものです。原料が異なっても、電気は一度送電線に入ってしまうと区別がつきません。

自然エネルギーの電気を選ぶということは、電気をつくるための原料や発電所を契約という形で担保する、ということです。送電線に入ってしまえば原料も発電する場所も事業者も関係なく同じ電気になってしまうので、たとえば風車の電気だけを抜き取ることはできません。結局は、電気を使う側が買う電力量と、発電事業者が売る電力量を同じにして、その環境価値も同じ量だけ受け取ったという契約をするのです。実はグリーン電力証書も「契約」の証明書のようなものです。

 

前田: 電力が自由化されている国でも、自然エネルギーの電気を選ぶ仕組みは同じなのですか?

 

竹村:はい。ほぼ同じです。日本でつくられた電気も、ヨーロッパやアフリカでつくられた電気も、電気の性質は全く同じもので、送電の物理的な仕組みは同じです。電気は物体ですが世界共通の均質なものですから。発送電が分離され、電力を自由化している国でも、コンセントをさしてそこから使える電気は、原発の電気も自然エネルギーの電気も区別はできません。自然エネルギーを選ぶということは、自然エネルギーの発電事業者や電力の小売業者と契約するということで、売ってもらう発電電力量と使用する電力量を相当させるという契約で担保しているということです。

太陽光発電などの自然エネルギーだけで電力を自給自足していて、外の送電網とはつながっていないコミュニティや家庭でない限りは、自然エネルギーの電気も原発のエネルギーの電気も全て混じって流れているのです。

 

●個人が自らの意志でエネルギーシフトを選択できる

 

前田: エナジーグリーンでは2012年1月より、日本で初めてとなる個人向けのグリーン電力証書「えねぱそ」の販売を始めましたね。私も「えねぱそ」の仕組みづくりに参加させていただき、メイド・イン・アースでもこの2月より直営オンラインショップで「えねぱそ」の取り扱いを始めます。いまの日本で、個人が自分の意志で多額の設備投資をしなくてもグリーン電力を選べる数少ない方法がグリーン電力証書ですが、震災後「エネルギーシフト」という言葉を聞いても、「グリーン電力証書」という言葉はあまり耳にしませんでした。であれば、自らが率先してグリーン電力証書を広めていく活動をしよう、と思ったからです。

エナジーグリーンが個人向けグリーン電力証書を発売するようになった経緯を聞かせていただけますか。

 

「えねぱそ」購入者に配られるシール

竹村: これは明らかに東日本大震災が契機になっています。3.11以降、個人のお客様から「グリーン電力証書を買いたい」とのお問い合わせが急増しました。

これまでエナジーグリーンでは企業向けにグリーン電力証書を発売していました。1000kWh単位からの販売で、大口の企業が需要家であることが多く、証書は額縁に入れてお届けしています。

エコロジーに関するイベントや音楽イベントなどで、1000kWh単位で購入するお客様が多いのですが、大企業が数百万kWh単位でグリーン電力証書を購入し、CSR活動として報告するということも行われてきました。最近では、東京都の環境確保条例でCO2排出量の総量削減義務が生じるようになったことなどもあり、直接的にCO2削減に充当させるという動きも見られるようになりました。

グリーン電力証書の発行事業者としては、1000kWhの小口の単位でも、100万kWhの大規模な単位であっても、手間の面では実は大きく変わりません。したがって、営業的には大口顧客へと流れる傾向にあります。ただ、大口の需要家を少数得るよりも、小口のお客様をたくさん広げていくほうが社会的にもインパクトがあり、グリーン電力証書を一般に広めていく力にはなります。

そう考えて、証書を印刷するとか額縁に入れるなどのよけいな手間を極力省き、グリーン電力証書の証明であるシリアルナンバーをインターネット上で確認できるような仕組みを開発し、最低購入単位も500kWhにして、個人でも購入できるようにしたのが、日本初の個人向けグリーン電力証書「えねぱそ」です。

 

グリーン電力証書の普及を進めてきた竹村英明さん

前田: メイド・イン・アースがグリーン電力証書を導入したのは、現在生きている私たちはもちろん、未来の子どもたちに対しても安全が確認できないような原子力や、限りある資源であり、使うことで地球環境に影響を及ぼす化石燃料由来の火力発電などから、再生可能な自然エネルギーによる発電にシフトしていきたいという思いがあるからです。

自然エネルギーのポテンシャルは非常に高く、今後の成長が期待されている産業分野であるとはいえ、現在の制度上ではその広がりにも限界があります。グリーン電力証書を購入することで、グリーン電力を生み出す発電所や事業者に直接的な支援ができます。多少値段が高くても自然エネルギーを求める人は少なからずいて、実際に購入できるメニューがあることがわかれば、自然エネルギーの発電所や、発電量そのものが増えていくことにもつながります。

そして、私たちメイド・イン・アースは、オーガニックコットン製品を通じてたくさんのお客様と日々接しています。メイド・イン・アースのお客様は環境を守ることや、持続可能なエネルギーやライフスタイルに関心が高い方が多く、私たちがグリーン電力を使っていることを積極的に発信することで、グリーン電力証書という仕組みを、より多くの人に知っていただけるのではないか、と思っています。

 

 ●さあ始めよう、我が家のエネルギーシフト

 

前田: マンションや賃貸住宅に住んでいる方のように、自宅の屋根に太陽光発電パネルを設置できない方にとっても、「えねぱそ」のように気軽に購入できるグリーン電力証書の仕組みがあれば、誰もが簡単にエネルギーシフトできるのも魅力ですね。

 

メイド・イン・アースが購入したグリーン電力は、長野県飯田市のおひさま発電所による電気。いつ、どこで、誰がつくった電気なのかがわかるのがグリーン電力証書である(写真提供:エナジーグリーン)

竹村: 日本全体での自然エネルギーの普及の観点や、地産地消の分散型システムへの移行という観点でも、一般家庭に太陽光発電システムが普及するのはとても大切なことだと思っています。ただ、設置費用の高さや手間、マンション生活者などは導入できないことなどを考えると、おおぜいの方が購入するだけで簡単にエネルギーシフトできる仕組みとして、「えねぱそ」はとても重要だと思っています。

「えねぱそ」をご購入されるのであれば、年間の消費電力量が5000kWhの一般家庭であれば、10口ということになります。「えねぱそ」の500kWhあたりの価格は自然エネルギーの種類によっても異なり、太陽光発電や風力発電であれば6300円、小水力発電は5250円、バイオマス発電は4200円です(いずれも消費税込み)。10口の購入で100%自然エネルギーへのシフトができます。家庭用太陽光発電システムの場合、高い設備投資をして、なおかつ半量近くを一般の送電網からの電気を買うので、100%エネルギーシフトすることは難しく、それを目指すのであれば10口程度の「えねぱそ」でできてしまいます。

 

前田: グリーン電力の普及という意味では、家庭用太陽光発電システムなどでエネルギーの自給自足を目指すのはとても大切だけど、誰もがもっと手軽にエネルギーシフトできるという点では「えねぱそ」の役割は大きいということですね。

ところで、「えねぱそ」の利用者が増え、グリーン電力証書が足りなくなる、ということはないのでしょうか?

 

竹村: いまの日本の総電力需要(約1兆kWh)に占めるグリーン電力の割合は約3%(約300億kWh)です。この3%には、生ゴミなどの発電も含まれていて、純粋な自然エネルギーとなるともう少し割合が下がりますが、この約300億kWhのうちに、グリーン電力証書化されているのは2億kWhだけです。つまり、日本の総電力需要のうちグリーン電力証書になっているのは0.02%。大部分は電力会社に全量販売されています。「えねぱそ」の利用者が0.02%を超えれば、新たな発電所をつくっても環境価値が売れるため、新規建設のインセンティブになります。自然エネルギーは世界中で伸び続けていて、ヨーロッパを中心に電力供給の10%を超え始めています。日本の3%は低すぎで、まだまだ広がる可能性だらけの事業です。

「えねぱそ」は「電力自由化の先がけ」「市民ができるエネルギーシフトの第一歩」と盛り上がった

まずは、いまつくられているグリーン電力の環境価値を証書化して、それを求める需要家を増やすところから始めています。「えねぱそ」をつくって個人に門戸を広げたことで、エネルギーシフトを進めていきたいと思っています。グリーン電力を求める個人が増えていけば、企業もそのニーズを察知し、選択が変わり、社会全体が変わっていきます。そのため、グリーン電力証書が買える窓口があちこちに増えていくのが理想ですね。

 

前田: メイド・イン・アースでもいよいよ「えねぱそ」を販売していきますが、東日本大震災から1年が経とうとしている今、自分たちの生活を見直し、エネルギーについて考えている人がとても増えていて、その人たちに実際に動くための選択肢を示せるというのは、とても有意義なことだと感じています。

まずは、電力が自由化されていない日本で、確実にエネルギーシフトができる数少ない方法であるグリーン電力証書の仕組みを伝えていくこと。そして少しずつ、いろんな人に浸透させていくこと。メイド・イン・アースのお客様を皮切りに、個人が主体となって日本全体がエネルギーシフトを実現していく。そのきっかけに「えねぱそ」がなっていけばいいなと感じています。

【プロフィール】

竹村英明(たけむら・ひであき)さん 

1951年広島県生まれ。横浜市立大学卒業。学生時代から公害反対運動や反原発活動に取り組む。国会議員秘書・環境NGOを経て、2004年よりNPO法人環境エネルギー政策研究所へ。長野県おひさま進歩エネルギーの事業立ち上げを担う。現在はエナジーグリーン株式会社の取締役副社長として、グリーン電力証書の発売や、全国各地の地産地消エネルギーを活用する発電所づくりなどに奔走する。

環境エネルギー政策研究所 
http://www.isep.or.jp/

エナジーグリーン 
http://www.energygreen.co.jp/

 

「えねぱそ」オフィシャルサイト
http://www.ene-paso.net/

各特集最新記事一覧へ